以前、02)の投稿で、大大将棋の駒初期配置について取り上げました。通説は間違いなのではということを書きましたが、本稿の主旨も同じです。今回は平安大将棋についてです。通常考えられている平安大将棋の初期配置は、二中暦の文面どおりに次のように考えられています。
注
歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩
奔飛 虎 横 虎 飛奔
香桂鉄銅銀金玉金銀銅鉄桂香
-----------------------------------図1
図1で飛は飛龍ですが、この飛龍の配置と駒の動きについては、二中暦では、
飛龍在桂馬之上 四隅超越
となっています。
飛龍在桂馬之上 => 飛龍は桂馬の上にある、という文をそのままに解釈すると、当然、図1にようになります。しかし、これはきれいでありません。むしろ、下のようにきちんと並んでいる方が自然です(図2)。
注
歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩
奔 飛 虎 横 虎 飛 奔
香桂鉄銅銀金玉金銀銅鉄桂香
-----------------------------------図2
二中暦の記述を前提として、では、それをどう解釈すれば図2のようになるのでしょうか?
飛龍在桂馬之上 => 飛龍は桂馬の行先上にある
と考えてみました。将棋の歴史(妄想)のブログでも指摘されていますが、駒のちょうど上にある場合は、頂にありという記載がされており、横行、猛虎、奔車の3つについてはそう書かれています。しかし、飛龍についてのみ、飛龍在桂馬之頂、とは書かれておらず、桂馬の上なのです。ここを攻略点としました。なお、駒の動きは次のとおりです。
桂馬:ななめ前方の2マス目に跳び越す(角角越2目)
飛龍:ななめ前方・後方の2マス目に跳び越す(角角腎腎越2目)
図2のような配置にすれば、桂馬と飛龍が交互にななめに飛び越して出て行けますので戦略的に明解です。似たような駒の配置は摩訶大将棋にも見られ、角行のななめ下に飛龍、竪行の真下に猛牛、龍馬のななめ下に羅刹、といった配置です。たとえば、ななめ方向の攻めに、角行と飛龍、龍馬と羅刹が連携するという戦法になります。
今回もまた桂馬の動き(角角越2目)が重要なキーポイントとなりました。古文書に記載されている昔の桂馬の動きをもとに、これまで、次の3点を取り上げています。
1)普通唱導集の大将棋の駒組(投稿25)
2)宝応象戯と平安将棋の関連性について(投稿27)
3)平安大将棋の初期配置(本稿)
仮に桂馬の動きが今も昔も同じだったとすれば、上の3件は説明ができません。特に、1)と3)が説明できる点、古文書に記載されている桂馬の動き(角角越2目)はかなり信頼できるのではないかと思っています。
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mizo (金曜日, 21 9月 2012 23:50)
注
歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩
飛 横 飛
奔 虎 虎 奔
香桂鉄銅銀金玉金銀銅鉄桂香
-----------------------------------図
が、私の提案です。
「横行」:在王之頂方
「猛虎」:在銀之頂
「飛龍」:在桂馬之上
「奔車」:在香車之頂
「注人」:在中心歩兵之頂
「横行」の頂方という表現は、すぐ上でないことを表していると思います。
全体が13×13なので、図2では両陣営が離れすぎていると思います。
「飛龍」の動きは、(角角腎腎踊)だと思います。
長さん (月曜日, 24 9月 2012 10:46)
何れにしても、平安大将棋は、攻め駒と言えば、奔車、桂馬、飛龍位しか
なく、多少ルールを、いじっても変化の乏しい、のどかな将棋ですね。
mizo (月曜日, 24 9月 2012 23:05)
長さんのご指摘通りだと思います。
私は、「二中歴将棋」(平安将棋)は持ち駒再使用ルールであったため、弱い「桂馬」「香車」も持ち駒になれば、隙あらば打ち込んで両取り・串刺しなどが狙えたと思います。
この性能のまま「二中歴大将棋」(平安大将棋)を取り捨てルールにしたため、面白くなく流行しなかったと思います。次の「普通唱導集大将棋」(飛車・角行などが加わる)は攻め駒が増え流行したのだと思います。