今日、象戯圖のことをある方より少しだけお聞きすることができました。
ありがとうございました!
曼殊院宮が所持の本(1443年に写本したもの)は、古典将棋の原典とでもいうべき古文書です。この本の写本は4巻が残っているそうです。水無瀬神宮に2巻、東京都立図書館に1巻、大橋家文書に1巻です(のはずです)。水無瀬神宮の1巻が象戯圖と呼ばれているもので、東京都立図書館所蔵の1巻が象棊纂圖部類抄です。
私は象棊纂圖部類抄のコピーを持っていますが(実物も見ています)、気になっていることのひとつが、巻物中の次の箇所でした。
(文章の冒頭より、読み下し、一部意訳)
皆金に成るその他の小駒は皆走り駒になる。元の行き先を違わずして走る也。そのうち1目2目をば踊らず、皆駒を越す。麒麟鳳凰の如くには非ず。(以下略)
文の始まりが唐突です。この文章の前に何かの文章があったのではと思っていましたので(写本の写し漏れがあったのではと)、この点、同じ写本である象戯圖と比べてみたかったのですが、今日、それがかないました。
結果、象戯圖も同じ記述だそうです。というわけで、この件、残りは水無瀬神宮のあと1巻と大橋家文書の1巻となりました。ゆっくりと機会を待っています。
ところで、上述の箇所は、これまであまり問題にされていませんが、摩訶大将棋にとって非常に重要な箇所です。ひとつは踊りの定義を限定できること、ひとつは小駒の成駒(奔金、奔狼、奔熊等々)がかなりユニークなことです。
たとえば、力士は、3目を踊りますが(1目2目にある敵の駒も取ることができる)、1目2目に行くことはできません(つまり、踊らざれば1目2目、駒を越す)。
しかし、狛犬は、3目を踊り、かつ1目2目に降り立つこともできます。踊らざれば1目2目駒を越す、ではなく、要に随いて1目も2目も使うと書いてあるからです。
奔金は、1目2目を超えて走る駒のようです。つまり、すぐ前に駒がいても飛び出していけます。逆に、1目2目にいる敵の駒は取ることができません(1目2目をば踊らず、ですので)。
踊り駒のこと、奔金のこと等、積もる話は山のようにあります。以前の踊りに関する投稿で思い違いをしていたこともあり、その修正もしないといけません。
これらの件、また投稿いたします。
コメントをお書きください
長さん (木曜日, 25 10月 2012 09:01)
なるほど、摩訶大「大」将棋の「奔駒」の動きに関する
通説というは、「麒麟と鳳凰に似てない飛び越え」という
言い回しが、たとえばノストラダムスの「諸世紀」の詩の
ように難解なため、後半部分をほぼ、無視したというわけ
なのですね。
T_T (金曜日, 26 10月 2012 00:04)
麒麟鳳凰は、
○ 1目だけ越す
○ 越し終えた地点で止まる
一方、「奔駒」は、
○ 1目2目の2つを越す
○ 越してもなおその先を走ることが可
という意味で「麒麟鳳凰の如くには非ず」だと考えています。
それと、将棋の名称、摩訶大大将棋と摩訶大将棋ですが、どちらも同じものですので、好きな方を使うということでいいのかなと思っています。この名称の件また投稿いたします。
mizo (金曜日, 26 10月 2012 22:14)
問題の部分は、大将基のあとに書かれています。
はじめに鉤行・摩蝎(魚扁)の説明があり、次にこの文があります。
皆成金
其外ノ小馬ハ皆走馬ニナル 元ノ行度ヲ違スシテ走也
其内一目二目ヲハヲトラス皆越馬 麒麟鳳凰ノ如ニハ非ス
踊馬走歩兵
其外ハ驢馬二目ヲ跳ル 其外内一目ヲハヲトラス
力士金剛ハ三目ヲトル
この後に、狛犬の説明、提婆・無明・醉象・玉将の成りの説明が続きます。
私は、内容から、摩訶大々象戯についての異説をここに載せたと思います。
T_T (土曜日, 27 10月 2012 01:28)
mizoさんへ
コメントありがとうございます!
ここの箇所いずれ投稿のテーマにと思っていましたが、先に出てしまいましたので、少し書きますと、驢馬の記述が重要点となります。踊りの定義の貴重な情報です。
驢馬の動きについては、別の箇所に記述がありますが、そこでは、踊と書かれています。結論だけ書きますと、驢馬は越(=跳ねる)と考えるのが妥当ですので、引用していただいたところの記述が正しいことになります。つまり、この場所の記述は、異説と捉えるよりも、主流の説と捉えた方がいいのではと思っています。
本題の「奔駒」の動き方ですが、記述はここの箇所しかありませんので、象戯圖を資料としたとき、奔駒はこういう動き方(走り駒、ただし、1目2目は越)、というのが結論であり、それが合理的です。異説というイメージではないと考えます。
踊りと越しの違いについては、そのうち新しい投稿といたします。
長さん (月曜日, 29 10月 2012 11:12)
了解しました。大局将棋の「(右)鳩槃」に、その動かし方の
片鱗が残存しているのかもしれませんね。