205)はじめに摩訶大将棋があったという可能性

本稿のタイトルとは違いますが、先週末、東京にて、同じ主旨の発表をしてきました。予稿を全部ここに置くことはできませんので、とりあえず、冒頭の要約の文章のみ、紹介します。ゲーム学会の研究会「ゲームと数理」での30 分の発表です(少し時間オーバーだったかも知れません)。

 

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摩訶大将棋と薬師如来:序報

高見友幸

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要約: 

 平安時代から室町時代にかけては,小将棋(駒数36枚〜42枚)の他,さらに駒数の多い大型将棋(68枚〜354枚)が存在していた.我々の研究グループでは,大型将棋のひとつである摩訶大将棋復刻の試みを続けてきたが,その研究からは摩訶大将棋は大型将棋の起源だった可能性が高いという結論が得られている.さらには,摩訶大将棋が小将棋の起源だった可能性もある.これらを検討するためのいくつかの知見を提供した上で,新たな将棋史について議論するのが本発表の目的である.

 摩訶大将棋が将棋史の始めに成立したとする根拠は,摩訶大将棋の駒種とルールに見られるあまりにも整然とした構成にある.玉将が薬師如来に相当する駒だと想定すれば,それと連動して,薬師如来の脇侍である日光菩薩と月光菩薩,守護神である十二神将,供養として並ぶお香,伎楽,瓔珞に相当する駒を見つけることができる.一方で,玉将は天皇(=薬師如来)であり,チェスの駒で言えばキングに相当する.すぐ前に王子の駒があり,その前に道祓いの狛犬舞,師子舞の駒が配置される.摩訶大将棋の対局は薬師悔過の実践であり,対局は天皇自らが取り仕切る.それ故,対局は国の危機に対するものであり,たとえば,薬師如来による天変地異の鎮静を祈願したのである.摩訶大将棋に天の駒(十二支の駒)と地の駒(金銀銅鉄石瓦土の駒)が並ぶのはそのためだと考える.