キラーアプリケーションという言葉があります。決め手となる重要なアプリケーションのことですが、同じような意味合いでキラークエッション(決め手となる重要な質問)と呼んでみました。
将棋の起源を論じる際、キラークエッションに対してどのような答えを返すことができるかで、それぞれの仮説の正否や論理性がある程度は判断できるだろうと思います。以下に、平安将棋を題材としたキラークエッションを並べてみました。自説をお持ちの皆様、いかがでしょうか。
1:世界の将棋類を見れば、玉将に相当する駒は、たいていの場合、king(王)である。平安将棋では、玉将という名称が採用されている。どう説明するか。
2:金将、銀将、桂馬、香車の名前の由来は何か。
3:歩兵はなぜ3列目に並ぶのか。世界の将棋類では、歩兵相当の駒は2列目に並ぶことが多い。
4:酔象の駒が、11世紀に出土している。一方、二中歴(12〜13世紀)に記載される将棋には、酔象の駒は登場しない。この点をどう説明するか。
5:世界の将棋類では、駒の動きは、前後にも左右にも対称の動きをする。ところが、平安将棋の金、銀、桂、香は前後非対称の動きである。たとえば、ななめの4方向だけに動く駒が、平安将棋にはない。創案当初の将棋にこのような基本的な動きの駒がない理由をどう説明するか。
6:世界の将棋類との比較では、平安将棋の成りは特異である。歩兵、香車、桂馬、銀将は、敵陣に入った時点で、金に成る。このルールが成立した経緯をどう説明するか。
ところで、本ブログでは、将棋の起源は摩訶大将棋であるとの立場です。仏様神様が将棋を遊戯神通するわけですが、その道具立てが摩訶大将棋の盤と駒ということになります。このとき、玉将の駒は薬師如来に相当し、将棋を遊ぶことは、たとえば、天変地異鎮圧の呪力を引き出すための祈願に相当しています(と考えています)。遊戯神通については投稿207)を、薬師如来と摩訶大将棋の関連については、最近の投稿からでは投稿201)〜206)を参照下さい。
玉将=薬師如来説をとる場合、上記6つのキラークエッションは、同じわく組みの中で答えを提示することができます。中心となる仮説は、平安将棋が始めにあるのではなく、摩訶大将棋から平安将棋ができたというシナリオです。このシナリオに基づくことで、キラークエッションの答えが自然と浮かび上がってきます。
通説のとおり平安将棋が始めだと見た場合には、それが伝来したものであっても日本創案のものであっても、6つのキラークエッションに統一的に答えるのはむずかしいのではないでしょうか。
(2017.03.30 14:10)