今日も引用です。ただ、本ブログでも、次の投稿で関連の考察をしています。
172)再考:仲人の駒の謎(2015年11月3日)
初期の頃の考察です。さらにご興味おありの方は、次の投稿も参照下さい。3年前の投稿、センチメンタルかも知れません。この頃が初出です。
116)仲人の駒の謎:象棊纂圖部類抄より(2014年10月20日)
117)摩訶大将棋の駒の動き方:2014秋版(2014年10月24日)
最近の投稿(218:詰め大将棋)でも書きましたが、今は、摩訶大将棋、大将棋とも、仲人は居喰い以外では取ることができないルールで対局がなされています。
------(以下、引用)
象戯圖の中将棋の記述箇所,仲人の項に,次の注釈が書かれている。
不行傍立聖目内
或説云居喫師子許也
鳳凰仲人等行度如大象戯
文献[4]では,この注釈部の解読から,仲人の動きが復刻された。その要点を述べると,象戯圖の中将棋の記述箇所は,中将棋のルールの中で注意すべき点だけを列挙したものだと考える点である。
さて,本稿において注目するのは,「或説云居喫師子許也」の記述である。「ある説によれば,師子で(仲人を)居喰いすることが可能」,と書かれている。「或説云」という記述は,ある説以外の説が主流であるという前提でなければならない。つまり,「居喫師子許也」の意味としては,通常では,師子は(仲人を)居喰いができないが,ある説によると,居喰いができると言っているのである。
師子が居喰いできるのは当然のことで,では,なぜこのような記述がなされているのか。問題は師子ではなく,仲人の方にあると考えればよい。
仲人のいる位置には敵駒は進めないというルールがあった,そう解釈するのである。つまり,仲人は取ることのできない駒だったということである。ただし,師子は仲人を取ることができた。師子は,仲人の位置に進まずに,仲人を取る方法(=居喰い)を持っているからである。ある説というのは,このことを言っている。仲人は,ふつうは取れない駒であるが,師子の居喰いを使うなら取ることができたというわけである。象戯圖が書かれた当時,中将棋のルールの主流は,仲人はどの駒でも取ることができなかったのである。同じように、中将棋よりも以前に成立していた摩訶大将棋と大将棋の仲人も取ることができない駒だったと思われる(師子と狛犬の居喰いによれば取ることはできた)。
参考文献(上記引用にて引かれている文献のみ)
[4] 高見友幸,久保直子,山本博史,中根康之,原久子,大型将棋における仲人の動きについて -象戯圖と普通唱導集の解読から-,ゲーム学会第14回全国大会論文集,11-14,2016.