237)天変地異と摩訶大将棋:隕石と玉と将棋と薬師如来

今年の1月、呪術としての摩訶大将棋のことを学会発表しています。そのとき、たいへん貴重な情報を教えてもらいました。このことは是非書いておかねばです。

 

古典籍文理融合シンポジウム

日時:2018年1月30日(火)~1月31日(水)

場所:国立極地研究所・国文学研究資料館 2階大会議室

主催:「天変地異と人間社会の変遷:言葉の在り方と世界の在り方」(2017年度 総研大 学融合推進センター センター長裁量支援研究)

https://aurora4d.jp/workshop/614/

 

「天変地異と摩訶大将棋 ―明月記と象戯圖の解読から―」

というタイトルで発表しましたが、発表のppt画面は、後日公開されることになっています。ただ、古文書の画像が多数含まれるため、まだ手続きがとれておらず、アップロードできていません。

 

発表は、時間も短かったですので、摩訶大将棋の復刻や大型将棋の成立順をほぼ省略し、摩訶大将棋に現れる呪術の部分、つまり、玉将=薬師如来説からはじめ、そこから、天皇の薬師悔過、天変地異を鎮める薬師如来のことを発表しました。類似の内容は、本ブログでも、断片的に投稿しています。たとえば、

214)洪水の発生と古代の将棋(2017年4月20日)、

210)薬師如来の呪力の一例:洪水を封じる(2017年3月18日)

208)大地震と摩訶大将棋:金銀銅鉄石土の駒ができた理由(2017年3月15日)

220)摩訶大将棋の地理の駒(2017年12月4日)、

204)将棋の桂馬と香車:薬師如来への供養(2017年2月7日)、

などを参照下さい。

 

さて、本題ですが、教えてもらった貴重な情報は、隕石落下に関する江戸時代の古文書に書かれた次の記述です。

 

薬師如来が玉になって落ちてきた

と書かれているそうです。本稿では、この記述があることのみ、書き置きます(詳細は、古文書の原本を調べた後、後日の投稿ということで)。「科博の八王子隕石小片について」の発表のとき、発表された情報です。隕石の研究者には周知の事実なのかもですが、私は知りませんでした。

 

隕石=玉と考えることについては、そのとおりの普通の記述だと言えますが、では、なぜ、それが薬師如来なのかという点が注目されるべきでしょう。阿弥陀如来でも、釈迦如来でもなく、薬師如来だというのです。

 

これは、将棋の玉将が薬師如来であることと同じ理由なのではないでしょうか。玉が薬師如来であることは、玉=天皇=薬師如来ということと、薬師如来(=薬師瑠璃光如来)の瑠璃という語句からも来ているものだと思われます。隕石が瑠璃色の光を発して飛んできたということもあるかも知れません。この場合、瑠璃+光ですから、もっと、薬師瑠璃光如来に近づくでしょう。

 

ともあれ、玉が薬師如来と結びついているのは、江戸時代の古文書の記録者が、そのとき思いついた話ではなく、もっと普遍的にあった認識ではないのかと考えます。