267)摩訶大将棋の復刻本2

前稿にてブログにはなく新刊本にはある項目を書きました。その逆の、ブログに少し書いているのに、本には書かなかった項目についてもお知らせしておかないといけません。将棋と呪術に関連する2つの話しがそれです。次の本には是非入れたく思ってます。以下、第4章から3つの引用です。

 

p63「第4章 起源の将棋」の書き出し:

チェスや将棋のルーツは、一般的には、インドのチャトランガ、ペルシアのシャトランジであると考えられている。西に伝搬してチェスになり、東に伝搬して将棋になったというのが、現状での定説である。ただ、本書で導かれた結果からは、将棋とチェスのルーツは全く別である可能性が高い。チェスは、定説どおり、縦横8マスの盤、16個の立体駒を使うシャトランジから派生したものと思われるが、将棋がシャトランジからの派生であるとは言えないのではないだろうか。摩訶大将棋も大大将棋にも、陰陽五行に基づく六十干支が組み込まれていることを考えると、この2つの将棋は、進化の結果として小さな将棋から大型化したのではなく、大型将棋としていきなり作られたと考える方が妥当であろう。

 

「4-2節 大型将棋の成立順」から

・・・本書の考え方によれば、図56に示されるとおり、摩訶大将棋→大将棋→平安大将棋の過程で、駒は31枚ずつ取り除かれていく。つまり、自陣の駒数96枚の摩訶大将棋から31枚を取り除き、駒数65枚の大将棋が作られた。次いで、その大将棋から31枚を取り除き、駒数34枚の平安大将棋が作られたというわけである。

 実は、この31枚という数は、偶然ではない。同じ駒数96枚を持つ摩訶大将棋と大大将棋の間でも、駒の追加と取り除きがあるが、摩訶大将棋→大大将棋の過程でも、摩訶大将棋の駒が31枚だけ取り除かれていることがわかる。この場合、摩訶大将棋にはない駒が新しく31枚追加されており、摩訶大将棋と大大将棋で駒数は変わらない。

 このように、随所に31枚の駒の取り除きが見られること自体、仕組まれた何らかがあることを連想させるのである。つまり、将棋が変わっていくのは、純粋に遊戯の改良という観点で行われたわけではなかった。面白くするということが目的であれば、31枚に拘る必要はないのである。なお、取り除かれた31枚の駒の解釈は興味深いが、本書では取り扱わなかった。

 

p66 3)金将・銀将の駒が財宝や仏教由来でないことについて:

 先に成立していた大型将棋に、土将、木将、石将といった財宝や仏教由来を想起しにくい駒名があるため、従来の説明は却下されることになる。この点、あらためて玉金銀銅鉄石土と並ぶ将の駒名の意味を問わねばならない。この説明は、2−4節で見たとおり象戯圖の序文に地理の駒として最下段に並ぶことの説明はあるが、この地理の駒が何を意味するのかは本書では取り扱わなかった。将棋が陰陽五行に基づく以上、何らかの呪術的な要素を持つことは確かである。また、大型将棋が天皇周辺の国家中枢だけで行われたことを考えれば、プライベートな呪術のツールというよりは、国家鎮護のための呪術であった可能性も大きいのである。